確かにパソコンは紙とペンの代わりになる。それだけでも大きな進化だ。さらに、紙に依存した作業の多くをデジタル化することで、後日の作業が圧倒的にラクになる。
伝票と集計表
最終的に集計が必要なデータを記録していくとき、普通に考えるとExcelなどのスプレッドシートアプリを使えばいいんじゃないかと思うかもしれない。それは確かに正しいのだが、データの入力とデータの集計という別の次元の作業が共存していて不便なところもある。入力には入力に、集計には集計に最適なパソコンとの対話というものを考えよう。余談だが、アプリをあまりにも汎用的に使おうとしたばかりに「神(紙)Excel」、「Excel方眼紙」といった、とんでもない使い方が生まれてしまったのではないか。
もとい、最終的にExcelの表にまとめて集計するにしても、その元となるデータは、1件ごとの紙の伝票などに手書き記入し、ある程度たまったところで、そこで初めてパソコンに向かい、伝票から表にデータを転記して集計するということが多いのではないだろうか。
これなら伝票入力とデータ集計をうまく分離できる。ただ、転記ミスなどが起こるかもしれないし、物理的な紙の伝票を使っているとしたら、それを一箇所に集めるなどの手間がかかる。
そこでうまく利用したいのがフォームだ。入力しやすいように工夫したフォームにデータを入力できるようにする。エラーチェックもこの段階ですませる。
フォームの活用
MicrosoftにはMicrosoft Forms、GoogleにはGoogleフォームというサービスがある。どちらもアカウントさえあれば無料で使えるもので、本来はアンケートやイベントの出欠確認などに使われることを想定している。どちらも入力されたデータをまとめてExcelなどで読み込めるファイルに出力することができる。もちろん一人でも使えるし、応用範囲は広いのでこれをうまく利用してしまう。
たとえば、出納帳に毎日の入出金を記録して行かなければならないとする。小さなお店の店頭での現金売上げも同様だし、小学生の小遣い帳も基本的な構造としては同じだ。「いつ、どこで、何をいくらで買ったか」「誰に、何を、いくらで売ったか」などを伝票に記録し、最終的に表にまとめて週次、月次、年次などで集計する。
そのデータを入力する伝票フォームを作っておけば、Excelの表は自動的に生成されるのだ。こうした使い方のために昔はカード型データベースといったアプリのカテゴリーがあったくらいだ。しかも、フォームは複数のユーザーがバラバラに入力してもデータが保存されるのは一箇所で矛盾は起こらない。
何時に出勤して何をして何時に退勤したかといった勤怠管理、業務日誌から顧客対応など、フォームの応用範囲は広い。大事なことは非定型の行為を、いかに定型的な記録として残すかだ。しかも融通のきくように機械可読なデジタルデータで記録する。それがデジタルトランスフォーメーションだというのは乱暴だが、基本的にはそういうことだ。
業務をデジタル化するために、いきなり業務用アプリを使うのもひとつの手だが、コストもかかるし学習もたいへんだ。その点、フォームを利用したデジタル化なら、本来の用途とは微妙に違っているかもしれないが、今日からでもスタートできる。それではニッチもサッチもいかないくらいに業務が拡大したら、そのときに次の一手を考えればいい。