組織に属している場合、日常的に使っているメールアドレスは、その組織から借りているものだと考えるべきだ。つまり、その組織をなんらかの理由で離れる場合は、特別な制度がない限りは、メールアドレスを返却するのが普通だ。
|| メールアドレスは組織のもの
人間は生まれてから死ぬまで、いろいろな組織を転々とする。幼稚園や小学校などの教育機関から始まり、中学、高校、浪人すれば予備校、そして就職すれば会社、さらに転職すれば次の会社といった具合だ。
程度の違いこそあれ、電話番号も似たようなものだった。確かに電話機は固定された場所に置かれ、そこにかければ確実にその持ち主が受話器をとった。家(いえ)電と呼ばれるくらいで、人というより家に属していた。つまり、電話番号は場所に帰属したのだ。だから、引っ越しすれば電話番号は変わってしまう。
その一方で、携帯電話は個人に属するものとして、その電話番号は変えようとしない限りは変わらない。通信事業者を変えても電話番号を持ち運べるMNPの制度ができてからはそうなった。そういう意味では携帯電話番号は一生モノということができる。
メールアドレスも同じで、自分のものとして入手し、その維持にある程度のコストをかけることを覚悟すれば一生使うことができる。
これから世の中がどんな風に変わっていくのかはわからないが、これからの時代、少なくともメールアドレスについては、組織から貸与されるものは一時的であると考え、個人は個人として、変えようとしない限り、一生変わらないメールアドレスを確保すべきだろう。
|| 自分の組織ならメールアドレスも自分のもの
一生使えるメールアドレスを入手するにはいろいろな方法がある。GoogleやMicrosoftが絶対になくならないと信じられるのなら、彼らが提供する無償のメールサービスを利用してメールアドレスを入手し、それを維持すればいい。これはもっとも簡単な方法だしお金もほとんどかからない。具体的にはGmailやoutlook.comのメールサービスだ。
通信事業者に頼るのはあまりおすすめできない。たとえば、携帯電話事業者の発行するメールアドレスは、その契約がある限りは変わらないが、MNPで別の携帯電話事業者に乗り換えると電話番号はそのままなのに、メールアドレスは失われてしまう。インターネット接続プロバイダーも同様だ。より安いサービスへの乗換や引っ越し先のインターネット事情などで事業者を変える可能性があるから、そこに頼るのはやめたほうがいい。
もっとも安心していられる方法は、組織を自分で作ってしまうことだ。たとえば世帯を組織としてしまうことだろうか。もっとも結婚して世帯を離れることもあれば、離婚もある。それに振り回されるのなら、家族とは別に組織を自分だけで作る。組織の構成員は自分一人でもかまわない。それならメールアドレスを貸与する側にまわれるので、インターネットがある限り、自分のメールアドレスが失われることはない。その組織が仕事をするためのものなら、メールアドレスを従業員や協力者に発行して貸与することができる。
インターネットにおける組織は簡単に作れる。メールアドレスは、××@××.××.××の形をしているが、@の右側の部分を自分だけのものとして登録することができるのだ。インターネットでは組織のことをドメインと呼ぶが、そのドメイン名が@の右側部分となる。gmail.comやoutlook.comといった文字列がドメイン名だ。
世界には星の数ほどドメインがあって、その取得については早い者勝ちだ。先に取得したものが、管理費を支払い続ける限り、そのドメインの所有者として@の右側のドメイン名を独占的に使える。独占的に使っているのだから、@の左側についても自由になる。
ドメインの管理は自分でもできるが、現実的ではない。専門業者にまかせたほうが安上がりだ。その管理会社が事業をやめたとしても、そのまま自分のドメイン持ち込みで別の管理会社に移行できる。ドメインが失われることはないのだ。
長い人生の中で、転職があるかもしれず、起業するかもしれず、副業を始めるかもしれず、独立するかもしれずで、属していた組織から離れる可能性は決して低くない。そのためにも、一生、自分自身がインターネット上で一意となるメールアドレスを確保しておくのは、これからの新しい当たり前だと思っている。