2020/09/29

汎用と専用、非定型と定型


 パソコンの使い方には2種類ある。自発的に工夫して効率を上げる使い方と、あてがわれたやり方を遵守する使い方だ。どちらも大事だが、自分自身の創意が認められない後者は何かと理不尽なことも多い。


定型文書の悲哀

 企画書や提案書といった類いの非定型文書なら、作り手の工夫次第で説得力を高めることができる。それで魅力的な文書になれば、採用される確率も上がるはずだ。

 ところが、一般的な定型文書はそうじゃない。他の文書との差別化や付加価値よりも、他の文書と様式が同じであることが優先される。他社宛ての請求書や見積書などが、担当者や案件ごとに違っていたら受け取る方もめんくらうだろう。本当は、会社ごとの違いも無くしてしまいたいくらいなのだ。それは経費精算のときに手元のレシートを見ながら金額や明細を入力しているときに、店舗ごとのレシートに印字された日付や金額、店名などの位置が統一されていたらいいのにと思うくらいだ。きっと、誰もがいつも感じていることだろう。

 

その文書は本当に非定型か

 こうした理由で、定型文書は用途ごとに統一したものを作り、それを会社や部署で共有することが多い。その方が読むにも時間がかからない。大きな組織では、内製または誰かが四苦八苦して作成、あるいは、外部に委託して独自のアプリを作り、それを使っているかもしれない。

いずれにしても、定型文書のひな形は、いったん使い始めてしまったら最後、それが使いにくくても、改良が難しくなる。そして、使っているうちに、そんなものかと慣れ親しんでしまい、もっとよくしようといったことは考えなくなってしまう。

 各種の申込書などがWordの文書で届き、そこに必要事項を記入して返送するように指示されたメールをよく受け取る。手書きしないといけないよりはマシだ。かつてはFAX返送を指示するものも多かったがさすがに少なくなった。

メールに添付されたWordファイルを開くと、それはもう、本当に美しくレイアウトされていて、それを作成したのはWordの魔法使いかと思ったりもするのだが、いざ、氏名欄に自分の名前を挿入しただけでレイアウトがガタガタに崩れてしまったりしてガッカリさせられることはしょっちゅうだ。

Wordには、フォームの機能があって、各種記入欄には各種コントロールを配置することができるのだが、その機能を使ったファイルが送られてくることはまずない。そうしておいたほうが受け取る側も集計がExcelでサクッとできるはずなのにだ。インターネット上の各サイトで配布されている各種様式のテンプレートなども同様だ。最悪の場合、×××といった文字列を自分で書き直すようなものもよくある。

 ちょっとした工夫で、何の変哲もない定型文書だって使いやすくなるし、効率的なものになる。非定型だと信じて作っていた文書も、整理すれば定型かできるかもしれない。汎用を専用に、非定型を定型に落とし込む。紙とペンでやってきたことを、そのままパソコンに移行するだけではもったいない。それがデジタル移行のツボだ。