テキスト入力にはテキストエディター、文書作成にはワープロというのが今までの当たり前。その当たり前を新しくするとどうなるか。
その1秒と引き替えに得られるもの
商売として原稿を作るのにはずっとテキストエディターを使ってきた。なぜなら、素早く起動できるし動作も軽く、作業にストレスがないからだ。だが、近年、パソコンの処理性能が向上したことで、その優位性がちょっとあやしくなってきている。
試しに、起動の時間を計ってみたところ、エディターの秀丸はウィンドウが開くのに1秒かからないが、Wordは2秒近くかかる。この差は確かに大きいが、Wordが重くてたまらないといった印象は今はもうない。それでも、キーを叩いてからウィンドウに文字が表示されるまでのわずかなタイムラグなどを考慮すれば、やはりテキストエディターは軽い環境だといえる。
ただ、テキストエディターが扱えるのはテキストだけだ。文字サイズの変更と色をつける程度の装飾をして、図版を挿入し、さらに文中の文字列にリンクを設定するといったことさえできればいいので、何かいいアプリはないものかと探していた。
たとえば、Windows標準のWordpadはどうか。開いてみると、確かに素早く起動する。ただ、できることは限定的なのに、作業領域の広さがWordのウィンドウとたいして変わらない。しかも、Wordはリボンを折り畳めるので、実質的な編集画面はWordの方が広かったりするのであっさりと却下。
結局は、困ったときにも活用情報を多く得られるWordをエディタとして使うことにした。
Webレイアウト機能でWordをエディターライクに
Wordを使うのにはもうひとつの理由がある。それは、文書を構成する各種のデータをひとつのファイルにまとめてくれるからだ。たとえば、この記事はこのサイトの63個目のファイルだが、手元では、063という単一のファイルの中に関連データがまとまっている。ただし、置き場所はクラウドだ。メールで送ったり、フォルダーを移動したりの持ち運びにもそのファイルだけを操作すれば完結する。早い話が、関連ファイルをZIP形式で束ねただけのものなのだが、エンドユーザーがそのことを意識する必要はない。最悪の場合、ZIPから個々のファイルを取り出せばいい。
アプリ独自のファイル形式については、本当は過去に痛い目にあったことがある。ずっと以前のバージョンのWordファイルは読めなくなっているし、また、マイクロソフトにはMultiplanというスプレッドシートアプリがあったが、そのファイルをExcelで開くことはもうできない。こうして読めなくなったファイルが少なからず残っている。マイクロソフトでさえそうなのだから、特定のアプリの独自形式ファイルに依存するのは危険といえば危険だ。
ならばと、HTMLを扱えるエディタなどの利用も考えたのだが、やっぱりなんか違う。ひとつの記事を作るたびに専用のフォルダを作ってプロジェクトを…、といった手続きは億劫だ。
結局はWordを使うことに落ち着き、この記事についてもWordを使って書いている。ただし、以前に紹介したように、表示モードは「Webレイアウト」だ。ページの区切りもないし、当然、ページに対する余白もない。ウィンドウをフルに編集画面として使える。テキストだけを入力している分にはテキストエディタと変わらない。選択肢としてはGoogleドキュメントという手もあるのだが、この「Webレイアウト」機能がないのでWordに落ち着いた。