置換でできる再利用
単純な例でいうとすぐに思いつくのは見積書、納品書、請求書、領収書だ。一定の書式でこれらの書類を作るとして、最初に納品書を作れば、それを再利用して、残りの書類が作れる。作業としては、「見積」を「納品」、「請求」、「領収」に置換すればできあがりだ。
これらを手作業で作ることはもうあまり行われていないだろう。たいていは元帳データベースのデータを抽出して自動作成される。Excelなどを元帳にしているケースもありそうだ。だから、文書を再利用するといったことは、あまり意識していないかもしれない。
いきなり本文
それなら一般的なビジネス文書はどうだろう。特に、メールでやりとりされる文面だ。ビジネス文書といえば「拝啓、時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」から始まり、「敬具」といった文言でしめるのが一般的だ。だから、メールの署名に、この対を書き込んでおき、その間に本文を挿入することで、メールを完成させている人は少なくない。つまり、挨拶文言を再利用しているわけだ。
また、同じ組織の中でかわされるコミュニケーションにしても、「お世話になります」、「おつかれさまです」から始まり「取り急ぎご連絡まで」といった文言を対として、間に要件が挟み込まれたりもする。
ただ、この再利用しやすい文言の対がなくても文書の意図は伝わる。時候の挨拶など、書く側は書かなくていいし、読む側は読まなくてもいい。結果として双方の時間を節約できるとともに、肝心なことしか書いてないので、大事な要件を見落としにくいというメリットもある。
メールをはじめ、ビジネス文書には要件のみを書くというのは、やろうとすると、なかなか勇気がいるものだ。相手が組織外の場合など、とてつもなく失礼なことをしているんじゃないかと心配にもなる。でも、そういうところから変えていくことも必要だ。
世の中の風潮は、メールは書くのも読むのも煩雑だから、これからのビジネスコミュニケーションはチャットだというムードが強いが、メールの書き方のトレンドを変えることができればそうした議論はなくなるかもしれない。チャットツールは誰もが使う標準的なものがまだ確立していないが、メールについては事実上の標準といってもいい。横断的な検索もたやすい。相手ごとにシステムが異なるチャットでは検索もそのシステムの数だけ必要になる。
せっかくの事実上の標準をもっと活かしてもいいんじゃないか。