2020/11/20

霞が関のパスワードつきZIPファイル


 霞が関の中央省庁はファイルをアーカイブするZIPファイルをパスワードで保護してメール添付し、そのパスワードを別のメールで送るという習慣をやめるそうだ。この施策、本当に正しいのだろうか。

フェールセーフのためのZIP

 このニュースを見て、昔のことを思い出した。もう30年近く前のことだと思う。原稿を書き上げて、それをいつものように編集者にメールで送った。原稿はプレーンテキストファイルで書き、そのまま添付するのが常だった。

 ところが、返事が戻ってきて、原稿の量が足りないという。確か、4000字ほどの原稿だったと思う。電話で話をしながら、手元の送信済み原稿と、相手に届いた原稿を読み合わせた結果、ある段落がスッポリと抜けていることがわかった。

 プレーンテキストファイルだから開くことができたようだが原因は不明だ。

 以来、どんな小さなファイルであっても、メールに添付するときには、ZIPでアーカイブしてから送るようにした。もし、何らかの原因でファイルが壊れてしまった場合、ZIPにしておけば開くことができなくて事故が判明し、何らかのコンタクトがあるはずなので、それがフェールセーフになるからだ。

 確かに受け取った相手がスマホでメールを読んで、添付された原稿に目を通したいときに、ちょっとした手間がかかってしまうが、それはそれで仕方がないと考えた。

 

メールでファイルを送るのをやめてみないか

 でも、大事なのはそこじゃない。ファイルをメールで送ること自体に問題を感じなければならない。

 今、ぼくが書き上げた原稿を編集部に納品するときには、ファイルをクラウドに置いた状態で、そのリンクを伝えることが多い。これならどんなに大きなファイルでも大丈夫だし、画像がたくさんあっても平気だ。スマホでの閲覧も問題ない。場合によっては、送ってから気がついたミスについても修正ができる。修正したことだけを相手に知らせればいい。

 編集可能な権限を与えれば、そのファイルをその場所に置いたままで編集してもらえる。商業メディアへの掲載原稿は、自分の共有フォルダにおいたままで編集者が編集するというわけにはいかないので、相手はぼくのファイルの内容をコピーして、自分の環境にコピーしているはずだが、ビジネスの現場ではファイルをメールで送ることこそ撤廃してもいいんじゃないか。版を重ねるごとに、何度も何度もほぼ同じ内容の添付ファイルが往復し、しかも、CCに大量のアドレスが並ぶことこそ改善の余地があるのではないだろうか。