「新しい当たり前」。いうのは簡単だが、慣れ親しんできたことを変えるのにはたいへんなエネルギーが必要だ。それでも変わらなければならないと叫び続けるのは、がんばって変えてよかったという過去の経験があるからだ。
書く道具と世代
1.
手書きネイティブ
2.
パソコンネイティブ
3.
ケータイネイティブ
4.
スマホネイティブ
世代によって異なる「書く」ためのという道具への慣れ親しみだが、たぶん、多くの方は1から3のどれかに属していると思う。場合によっては1.5くらいのところにワープロ専用機ネイティブ、2.5くらいのところにポケベルネイティブといった世代があったかもしれない。
そして、それぞれが1から2へ、2から3、3から4へという道具の持ち替えを経験してきた。ぼく自身は1の世代なので、全部の持ち替えを経験しているが、二度と1には戻れないし、戻りたくないと思っている。ただ、1~4は進化ではなく変化ととらえるべきだ。そういう意味では2以降の世代は、すべてデジタルネイティブといってもいい。
なかでも道具としてのパソコンは特異で、ケータイが登場しても、スマホが登場しても取って代わられることはなかった。これからもきっとそうだろう。
新世代の登場
1から2への移行はたいへんだった。覚えなければならないことがたくさんあったし、何よりも慣れ親しんできたペンや鉛筆をキーボードに替えて書く行為は、最初のころは、まどろっこしくて泣きそうになりながらやっていた覚えがある。手書きの方がずっと早く書けるのに、という先入観もあってストレスはたまる一方だった。
その後、ガラケーでのボタン入力を強いられるようになるが、これまたたいへんだったし、それよりはマシとはいえ、スマホでのフリック入力も、とにかく手に馴染ませるのは苦痛だった。今でもそれほど高速なフリック入力はできないが、できないと困るという思いがあったからこそ取り組めた。
1から4は、書く道具としての鉛筆、キーボード、ボタン、タッチの世代でもある。
スマホネイティブの世代はタッチに慣れ親しむ一方で、併行して生き残っているパソコンネイティブの世界との共生を求められる過渡期の世代だ。手書きをキーボードによるパソコンでの入力に変えるのがたいへんだったことを思えば、スマホで慣れ親しんだフリック入力を物理的なキーボード入力と併用するのは、きっと同じくらいのエネルギーがいるのかもしれない。
もっともGIGAスクール構想などで、子どもたちがスマホより前に一人一台のパソコンを使うようになると、次は、
5.
ハイブリッドネイティブ
という世代が出現する。キーボードとタッチのハイブリッド世代だ。そのとき世の中はどんな感じになるんだろうと、無責任なことを思いながら、こうしてパソコンで文章を書いている。